交通事故・むち打ち症とは
「むちうち損傷」とは、その発生状況から呼ばれる名称で、総称として「外傷性頸部症候群」と呼ぶことも容認されています。
今日では、
頚椎捻挫・・・頚椎（首）が生理的可動範囲をこえて受傷したもの
頚部挫傷・・・上記、それ以下のもの
と呼称し区別するのが一般的です。
定義
頚椎捻挫は「頭部・頚部に直接の外力が加わることなく、体幹に加わった衝撃力によって、頭という重い物体を支えている頚椎に過伸展・過屈曲が強制され、そのために起こる傷害でＸ線撮影上、脱臼や骨折があきらかでないもの」と定義されています
むち打ち損傷の程度と分類
むち打ち損傷の程度と分類
Ⅰ度
症状 ： 頭頸部や背部の痛み、頸部の運動制限
発症時期 ： 1～24時間後、通常12～16時間後
症状の持続 ： 数日から3週間
損傷 ： 椎骨の圧迫、軟部組織被膜の軽微な損傷
Ⅱ度
症状 ： 頭頸部や背部の強い痛み、嚥下障害、項部硬直
発症時期 ： 1時間以内、遅くとも4～8時間以内
症状の持続 ： 2～4週
損傷 ： 筋損傷、関節包損傷、血管損傷、出血
Ⅲ度
症状 ： 頸椎の運動制限、頭部や腕の痛み、知覚障害、麻痺
発症時期 ： 直ちに
症状の持続 ： 6週間以上
損傷 ： 後部靭帯断裂、椎体偏位、骨折、椎間板破裂、
神経・神経根損傷
Ⅳ度
症状 ： 四肢麻痺、死亡
損傷 ： 脳震盪、頭蓋底骨折、脳幹損傷
おのおのに症状の特徴から、一般には次のような病型のカテゴリー分類がなされています。
１．頚椎捻挫型
２．頚神経根症状型
３．バレー･リュー症状型
４．脊髄症状型
原因と症状
過屈曲（過度の前屈・曲がる）
過屈曲では頭部が前下方に強く曲がります。
頚椎（首の骨）は前部を砕かれると椎間板も損傷し、髄核の脱出（ヘルニア）を起こし
脊髄神経に刺激を与える可能性もあります。
過伸展（過度の後屈・反る）
過伸展では頭部は強く反り曲がります。
前縦靭帯の断裂により椎骨の棘突起が折れる可能性もあります。
椎間板には後方での圧迫と前方での破裂もあり得ます。
椎骨動脈は損傷を受けると脳への血流の障害が生じます。
頚部の交感神経幹も損傷されることがあります。
椎骨動脈および頚部交感神経が障害されると他覚所見に乏しく、後頭部痛、頭痛、めまい、耳鳴、視力障害、知覚異常、手足のしびれなどの不定愁訴を主体とする場合もあります。
筋損傷
筋には軽度な挫傷や内出血から強度な断裂まで、程度様々な損傷を受ける可能性があります。
一般的に影響を受けるのは胸鎖乳突筋、斜角筋、頭板状筋ならびに頚長筋などです。
靭帯損傷
靭帯の厚さは数ミリしかなく、「鞭打ち」などの不慮な事故においては、靭帯は伸びたり、部分的に剥離したり、あるいは完全に断裂することがあります。
椎体（背骨）の前面を垂直に走っている前縦靭帯と、項部（首の後面）に幅広く分布する項靭帯は過伸展で損傷を受け、椎体（背骨）の後面に走る後縦靭帯は過屈曲で損傷を受ける可能性があります。
脊髄損傷
頚椎（首の骨）の周囲を覆う靭帯が引き裂かれると、椎体（背骨）は正常な整列から滑脱して脊髄神経を傷つけてしまう事があります。
脊髄神経の損傷は生体の機能停止を招き死亡の原因ともなります。
むちうちの衝撃は脳にも影響を与えることもあり、脳表面に微小出血を生じたり、
軟部組織に障害を与えない程度でも、延髄に点状の出血を起こすこともあります。
食道も骨の鋭い角に擦られたり、骨の間に挟まれたりして損傷を受ける可能性があります。
顎関節の障害
ムチ打ち症では顎関節（がくかんせつ：あごの関節）の障害が起こることがあります。
関節の靭帯に強い張力がかかることが原因です。
症状
◆痛み
頭痛・頚部痛・背部痛・腰痛・手足の痛み・筋肉のこり（過剰な筋緊張）・しびれ・運動制限など
◆脳神経症状
めまい・しびれ・知覚異常・脱力・耳鳴り・視力障害など
◆自律神経症状
迷走神経の機能異常による吐き気・頑固な便秘・微熱・動悸・呼吸障害・頻尿など
◆高次脳機能障害
記憶力の低下・物忘れ・思考力・集中力の低下
◆その他
睡眠障害・免疫力低下・極度の疲労感・内分泌機能異常など
予防
車の座席のヘッドレストを後頭部の高さに合わせましょう。ヘッドレストは頭に近付け、シートはあまり倒さないようにします。正面衝突が避けられない時は、体をシートに、頭をヘッドレストに押し付けるようにします。追突される危険のある時は、しっかりブレーキを踏み、体をシートに、頭をヘッドレストに押し付けてまっすぐ前を見るようにします。
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